監察医が亡くなったかたの死因だけでなく、その想いを伝える

最近のドラマでは、犯人を推理して突き止めることが主流になっているように思います。しかし、このドラマでは犯人探しに重きをおくよりも、亡くなったかたの想いに焦点を当てています。日々死体と向き合う監察医が、その死因だけでなく、どうしてそのような亡くなり方をしたのかということを突き止めて行きます。どちらかというと、犯人捜しは二の次で。「死人に口なし」とよく言いますが、実は死体というものはいろんな事実を持っていて、それを死体解剖のプロである監察医に証言してくれます。それは見逃されがちな小さな声なき声ですが、ちゃんと受け止めそしてご遺族にその想いを伝えてくれるのです。その想いはご遺族が想像していたものを、はるかに超えます。昔、大酒飲みだった母親が、急性アルコール中毒で亡くなったとき、普通なら最期までダメな母親だったと、娘は恨むところです。しかし、その母親はなんと娘に保険金を残すために辛い断酒を実行します。うつ病になっても、アルコール中毒から抜け出して、みかけは健全な体になって保険に加入するのです。その意思の強さは、涙なくしては語れません。ただ、娘の幸せを願って、自分にできるただひとつのこととして、死ぬために生きたのでした。娘はこのことを監察医から聴き、泣き崩れます。不器用な愛情を受け取れたとき、自分の中にある本当の気持ちにも気づけるのだなと思いました。